2026年10月16日

カスタマーハラスメント対策が義務化されました

こんにちは!グロースリンクグループ岡崎オフィスです。
■ 2026年10月1日から、すべての事業主の義務になりました

2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント(いわゆる「カスハラ」)への
対策が、事業主の法律上の義務になりました。

根拠となるのは、2025年(令和7年)6月11日に公布された改正労働施策総合推進法
(令和7年法律第63号)です。あわせて2026年2月26日には、厚生労働省から具体的な内容を
定めた「カスタマーハラスメント防止指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)
が公布されています。

これまでカスハラ対策は「望ましい取組」という位置づけでしたが、今回から、事業主が
雇用管理上必要な措置を講じる「義務」になりました。小売や飲食などの店舗に限らず、
お客様や取引先と接する従業員がいるすべての事業主が対象です。「うちは小さい会社だから
関係ない」ということはありませんので、ぜひこの機会に内容をご確認ください。


■ そもそも「カスハラ」とは?

厚生労働省の指針では、次の3つの要素をすべて満たすものを、職場におけるカスタマー
ハラスメントとしています。

 1. 顧客等の言動であること
  お客様だけでなく、取引先の担当者、施設の利用者やその家族、近隣住民、問い合わせを
  してきた人なども含まれます。

 2. 社会通念上許容される範囲を超えていること
  業務の性質などに照らして、常識的に許される範囲を超えた言動であることです。

 3. 従業員の就業環境が害されること
  その言動で従業員が身体的・精神的な苦痛を受け、働くうえで見過ごせない支障が
  生じることです。

電話やSNSなど、インターネット上で行われるものも含まれます。

「許容される範囲を超える」言動の典型例として、厚生労働省は次のようなものを挙げています。

【要求の内容が行き過ぎている例】
 ・理由のない要求、商品・サービスと関係のない要求
 ・契約で想定したサービスを著しく超える要求
 ・対応が不可能な要求
 ・不当な損害賠償要求

【要求の手段・態様が行き過ぎている例】
 ・暴行・傷害
 ・脅迫・中傷・侮辱・暴言・土下座の強要
 ・威圧的な言動
 ・継続的でしつこい言動
 ・居座りや監禁などの拘束的な言動

なお、内容と手段のどちらか一方だけが行き過ぎている場合でも、カスハラに当たり得るとされています。

一方で、お客様からの苦情がすべてカスハラになるわけではありません。正当なクレームは、
商品やサービスを改善するための大切な声です。また、障害のある方が不当な差別的取扱いを
しないよう求めることや、配慮を必要としている旨を伝えること自体は、カスハラには当たらないと
明記されています。

■ 事業主が必ずしなければならないこと(10の措置)

指針では、事業主が必ず講じなければならない措置として、次の10項目が示されています。

【方針の明確化と周知】
 ① カスハラには毅然と対応し、従業員を守るという方針を決めて、従業員に周知する
 ② カスハラの内容と、あらかじめ決めた対処法を従業員に周知する
  (例:上司に指示を仰ぐ、できるだけ1人で対応させない、犯罪に当たり得る言動は警察に
   通報する、本社に情報共有する)

【相談体制の整備】
 ③ 相談窓口をあらかじめ決めて、従業員に周知する
 ④ 相談窓口の担当者が適切に対応できるようにする

【起きたときの迅速・適切な対応】
 ⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認する
 ⑥ 被害を受けた従業員への配慮の措置を適正に行う
 ⑦ 再発防止に向けた措置を講じる

【悪質なカスハラの抑止】
 ⑧ 特に悪質なカスハラへの対処方針をあらかじめ決めて周知し、実際に対処できる体制を整える

【あわせて講じる措置】
 ⑨ 相談者などのプライバシーを守る措置を講じ、従業員に周知する
 ⑩ 相談したことなどを理由に不利益な取扱いをしない旨を定め、従業員に周知する

対策を講じる際は、消費者の権利や、障害者差別解消法が定める不当な差別的取扱いの
禁止・合理的配慮の提供義務にも留意する必要があります。

このほか、従業員が自社の商品やサービスをよく理解して対応力を高めるための研修、運用状況の
把握と見直し、業種・業態に応じた取組などは「望ましい取組」とされています。義務ではありま
せんが、あわせて検討されることをおすすめします。

また、自社がカスハラを「する側」にならないための配慮も求められています。法律では、事業主
の責務として、従業員が取引先など他社の従業員に対して行う言動に注意を払うよう、研修などの
配慮をすることが定められています。他社からカスハラの事実確認などへの協力を求められた場合
は、それに応じるよう努めなければなりません。

■ まず何から始める? 中小企業のための進め方

10の措置といっても、大がかりな仕組みが必要なわけではありません。会社の規模に合わせて、次
の順番で一つずつ整えていくのがおすすめです。

□ 会社の方針を文書にする
 「カスハラには毅然と対応し、従業員を守る」という方針を決め、社内に掲示したり、朝礼や回
  覧で伝えたりします。

□ 対応ルールを決める
 「1人で抱え込まず上司に代わる」「長時間の居座りや暴言には対応を打ち切る」「暴力や脅迫は
警察に通報する」など、現場で迷わないための手順を決め、従業員に伝えます。特に悪質なケースへ
の対処方針も、この段階で決めておきます。

□ 相談窓口を決める
 社長や総務担当者など、従業員が相談できる人を決めて周知します。小規模な会社でも、窓口を
「決めて、知らせる」ことが必要です。

□ 記録の取り方を決める
 いつ、誰が、どのような言動をしたかを記録できるようにしておくと、事実確認や再発防止に役立ちます。

□ プライバシー保護と不利益取扱いの禁止を明文化する
 相談したことで不利益を受けないこと、相談内容の秘密を守ることを就業規則などに定め、周知します。

□ 起きたときの対応を確認する
 事実確認、被害を受けた従業員のケア(担当替えやメンタル面のフォローなど)、再発防止策の検討
 までの流れを確認しておきます。

あわせて、自社の従業員が取引先にカスハラをしてしまわないよう、社内での注意喚起も忘れずに行いましょう。

厚生労働省は、企業向けの「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(2026年9月8日更新)や
業種別のマニュアル、店頭に掲示できるポスターなどを無料で公開しています。一から作るのが大変な
場合は、こうした資料を参考にすると効率的です。

■ まとめ:従業員を守ることが、会社を守ることに

カスハラ対策の義務化は、大企業だけでなく、従業員を雇用するすべての事業主に関わる制度改正です。
まずは「方針を決める」「相談窓口を決める」「対応ルールを決めて伝える」の3つから始めてみてください。

従業員が安心して働ける環境は、人材の定着や採用にもつながります。正当なご意見には真摯に耳を傾け
つつ、行き過ぎた言動からは従業員を守る。そのバランスの取れた体制づくりが求められています。

就業規則の見直しや社内体制の整備について詳しく知りたい場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
でも相談を受け付けています。ご不明な点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。


■ 参考資料(いずれも厚生労働省の公表資料/2026年10月14日時点で確認)
・厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
・厚生労働省リーフレット(詳細版)「2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策、
 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」
 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662580.pdf
・厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等に
 ついての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)
 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf
・厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html