コラム
2026年11月4日

飲食料品の消費税率が「1%」に? 2年間の引下げ法案のポイント

【ご注意】本コラムは、閣議決定され国会に提出された法案に基づくもので、
内容は確定していません。
国会で可決・成立して初めて確定します(令和8年11月4日現在)。
審議により内容が変わる可能性がありますので、最新情報をご確認ください。

■はじめに
こんにちは、グロースリンク税理士法人岡崎オフィスです。
飲食料品の消費税率を、令和9年4月から2年間に限り現行の8%から1%へ引き下げる法案が、
現在国会で審議されています。

政府は令和8年9月15日に改正の大綱を閣議決定し、同年10月9日に関連法案を
閣議決定のうえ国会へ提出しました。
国税庁は大綱の閣議決定と同日に「消費税率引下げ特設サイト」を開設し、
リーフレットやQ&Aを公表しています。ただし国税庁の資料にも、
「法案が国会で可決・成立した場合に確定する内容」である旨が明記されています。

本コラムでは、国税庁の公表資料をもとに、改正案の概要と事業者の皆さまが
今のうちに確認しておきたいポイントを整理します。

■改正案の概要
引下げの期間は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間とされています。
対象となる飲食料品の範囲は、現在の軽減税率(8%)の対象と同じです。

税率は次のとおりです(左が現行、右が改正案)。
・飲食料品(酒類・外食等を除く):8% → 1%(消費税0.78%、地方消費税0.22%)
・新聞の定期購読:8% → 8%(変更なし)
・その他(標準税率):10% → 10%(変更なし)

「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒類を除く)をいい、
医薬品や医薬部外品は含まれません。
食品と非食品が一体となった「一体資産」も、税抜価額1万円以下かつ食品の割合が
3分の2以上であれば、全体が1%の対象となります。

■外食・テイクアウトと経過措置
外食は引き続き10%のままで、持帰りとの税率差は現行の2%から9%に広がります。
判定の考え方は現行の軽減税率制度と同じです。

・店内飲食(イートイン):10%
・テイクアウト・出前・宅配:1%
・ケータリング等:10%(有料老人ホーム等での食事提供や学校給食などは1%)

イートインかテイクアウトかは、提供時点での顧客への意思確認により判定します。
税率差が大きくなるため、飲食店では確認方法や価格設定の見直しが重要になります。

また、令和9年4月1日以後の販売でも、次の取引には経過措置として8%が適用されます。
(選択適用ではありません)

・定期供給契約:令和9年1月1日前に締結し、4月1日前に対価を領収したもの
 (領収した部分に限る)
・通信販売:令和9年1月1日前に販売条件を提示し、4月1日前に申込みを受けたもの

なお、令和9年3月31日までに行った仕入れは、商品を4月以降に販売しても8%のままです。
返品や貸倒れも、当初の販売時の税率(8%)で処理します。

■事業者向けの各種特例
飲食料品を販売する事業者は、売上税額が減る一方で仕入れには10%のものも含まれるため、
申告方法によっては納税額が大きく変わります。改正案では次の特例が設けられる予定です。

(1) 免税事業者が課税事業者になる届出の特例
 令和9年4月1日の属する課税期間中に「課税事業者選択届出書」を提出すれば、
 その課税期間から課税事業者になれます。
 仕入税額が売上税額を上回れば還付を受けられます。
 ただし原則として2年間は課税事業者を続ける必要があります。

(2) 簡易課税から一般課税に戻る届出の特例
 同じ課税期間中に「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出すれば、
 その課税期間から一般課税で申告できます。
 いわゆる「2年縛り」は適用されず、2割特例・3割特例の適用者も同様です。

(3) 簡易課税の計算方法の特例
 簡易課税で申告する場合、1%対象の売上税額と同額を仕入税額とします。
 (業種区分にかかわらず)
 その他の売上には従来どおりみなし仕入率を適用します。

(4) 中間申告の特例
 中間納付税額が過大になるのを防ぐため、
 直前の課税期間の飲食料品の取引を1%(終了時は8%)で
 再計算した税額を基に、仮決算による中間申告ができます。

(1)・(2)の届出では、参考事項欄に「飲食料品特例」と記載します。
どの申告方法が有利かは、仕入れの構成や事業規模によって異なりますので、
個別に試算したうえで判断することをおすすめします。

■インボイス・価格表示・レジの実務対応
【インボイス】記載事項は変わりません。「軽減税率対象品目である旨」に代えて
「税率1%の対象品目である旨」を新たに記載する必要はなく、
税率ごとに区分した対価の額と消費税額等を記載します。
月をまたぐ請求書では、8%と1%が混在するため、期間ごとの区分記載が必要です。

【価格表示】総額表示の特例が設けられる予定です。
値札の貼替えが間に合わない、パッケージに価格が印字されているなどの事情がある場合、
令和9年2月1日から5月31日までは、誤認防止の掲示を条件に旧税率または
新税率での税込表示が認められます。
(終了時も令和11年2月1日から5月31日まで同様)
ただし、税抜価格のみの表示は引き続き認められません。

【レジ・システム】改修は早めの確認が必要です。
国税庁はレジ・システム開発事業者向けの案内も公表しています。
利用中のベンダーに、税率設定の切替方法や対応時期を確認しておきましょう。

■まとめ
飲食料品の税率1%への引下げは、家計にとっては負担軽減となる一方、
事業者にとっては税率の切替対応や申告方法の見直しが必要になる改正です。
とくに届出の特例は提出期限があるため、早めの試算と検討が大切です。

※繰り返しになりますが、本コラムの内容は閣議決定され
国会に提出された法案段階のものであり、
確定した制度ではありません。
国会審議の結果により、内容や施行時期が変わる可能性があります。
当法人では引き続き動向を注視し、法案成立後に改めて情報をお届けします。
ご自身の事業への影響や届出の要否については、お気軽にご相談ください。


■参考資料(国税庁)

・消費税率引下げ特設サイト(国税庁・財務省)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/zeiritsuhikisage.htm
・リーフレット「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026008-127_leaflet.pdf
・パンフレット「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026008-127_pamphlet.pdf
・飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(令和8年9月)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026008-127_qa.pdf
・No.6102 消費税の軽減税率制度(タックスアンサー)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6102.htm